桜一文字さんの息抜き
2024-09-14 00:01:00
ProfiteroleMix
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対象年齢：全年齢
デイリー入賞： 141 位
参加お題：ミュージック
幽魅を探して町を歩いていたら、いつの間にか夜になってしまいました。秋の季節になり、陽が沈むのが早くなってきた事を実感していると、視界の端で季節外れの桜がちらついたような気がして振り向きました。
「げっ、早渚さん～・・・」
桜のように思えたのは、桜色の髪でした。金剛院家のメイド、桜一文字さんが黒いTシャツとパンツに身を包んで歩いていたのです。
「こんばんは、桜一文字さん。もしかしてダンスクラブですか？」
「アレハヒトチガイデス」
棒読みで人違いを主張して逃げ出そうとする桜一文字さんの手を、私はしっかりと掴みました。
「私の名前呼びましたよね。それに本当に人違いだったら、『あれは』とか言わないと思います」
「ぐぬぅ・・・まるで探偵さんじゃないですか早渚さ～ん・・・」
桜一文字さんは観念したのかすねたような目つきで私を見上げました。
「今日はダンスクラブじゃなくて一人カラオケですよ～」
「・・・もしよかったら、私も桜一文字さんとご一緒していいですか？」
私が申し出ると、桜一文字さんは目を伏せてしまいます。
「めっちゃ恥ずかしいんですけど・・・」
「ダメなら仕方ないので、カラオケ店の前で待っていますが」
「いやいやいや、そんな事させられませんよ～。しょうがないですね、一緒にお店入りましょうか・・・」
その後、桜一文字さんと一緒にカラオケを楽しみました。というか、桜一文字さん歌唱レベル高い。あと歌い始めたらすぐキラキラの笑顔になるの反則じゃないですか。自分から同行を申し出ておいて何ですが、こんな綺麗な人と密室に二人きりなの緊張してしまう・・・。
帰り道、桜一文字さんと雑談しながら金剛院邸へ向かう途中。
「早渚さんって、こう言ったら何ですけど、歌あんまり得意じゃないですよね～？」
「まあ、はい。上手いとは思ってませんが」
「でも歌うのは好きなんですか～？」
「歌・・・というより、桜一文字さんが気になって」
私が何気なく言うと、桜一文字さんがビクッとなって立ち止まります。
「桜一文字さん？」
「え、あ、いやあの。私の事が気になるって・・・えと」
桜一文字さんは顔を真っ赤にしてあたふたしています。何かおかしな事を言ってしまったかな・・・。
「実はここ最近で、ちょっと知り合いの女性が亡く・・・行方不明になりまして」
「え？」
「女性ばかり襲うと噂の通り魔もまだ捕まっていないようですし、そんな状況で夜遅くに桜一文字さんを一人で放っておくのは心配だったので」
「・・・・・・もう、焦らせないで下さい～。気になるってそういう意味ですか～、もう～。告白されたかと思いましたよ～」
告白・・・あ、確かにそう聞こえなくもないか。
「すみません、紛らわしくて。そういう意図はなかったんです。あ、でも桜一文字さんに魅力が無いわけではなくて、とても魅力的な女性だと思いますよ、好感が持てるのは間違いありません」
「何で追い打ちかけるんですか～！そのフォロー入れたらガチ告白になるでしょ～！」
桜一文字さんが恥ずかしがってぺしぺし私の背中を叩きます。
「なんかすみません。でも、実際夜の一人歩きは危ないので、息抜きだとしても複数人で行くとか、防犯グッズ持つとかしておいてください」
「・・・は～い」
まだ顔の赤い桜一文字さんと並んで、私は帰り道を急ぎました。私の顔も赤い事に気付かれる前に帰らなくては。
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