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赤の雫で契約を
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赤の雫で契約を
2024-09-09 00:00:00
ProfiteroleMix
ProfiteroleMix
対象年齢：全年齢
デイリー入賞： 91 位
参加お題：天才
幽魅の事を調べてもらうために、三年前にもらった名刺を頼りに江楠さんに連絡しました。彼女は私の事を覚えており、相談したい事があると一言私が言い出しただけで「ではD坂のフレンチレストランで落ち合おう」と会えることになりました。
「やあ早渚君、壮健そうでなりよりだ。あの頃と比べると一層名を馳せたようじゃあないか」
彼女は奥のテラス席で待っていました。注文を済ませると、私は江楠さんに挨拶を始めます。
「その節はお世話になりました。いや、まさかたまたまこの町にご滞在だったとは・・・」
「白々しいねェ。駅で私を見つけた途端に身を縮こまらせてコソコソ逃げ去ったのはどちら様だったかなぁ？」
気付かれてた！・・・さすが探偵、目端が利くようです。
「・・・失礼しました」
「ふぅん、気にすることはないさ。真っ当な人間なら珍しくもない反応だよ。私は人の皮をかぶった悪魔だからねェ」
自嘲気味に笑う江楠さんですが、その目には一切の遊びがありません。江楠さんとの話は長引かせると危険だと感じ、私は早々に本題を切り出しました。
「藤巳幽魅という女性について調査をお願いしたいんです」
「名前と性別以外の情報はあるかい？」
「写真はありませんが、外見的特徴なら。あとは、恋人がいるようです」
そこまで聞くと、江楠さんは笑い声を漏らしました。
「ククッ、こいつは大分ワケアリの依頼だねェ？その女性、行方不明か死亡してるかのどちらかだろう」
「・・・なぜ、そう思うんです」
「簡単な事さ。撮影中毒者とも言える君が『写真がない』だってェ？そうなれば被写体は『見るに堪えない』状態か『撮影できない』状態って事になる。そして以前から君の知り合いだったなら写真一枚無いなんてありえない。彼女の家族を頼って写真の供出を頼む事もできたろうにそれもない。だから君が彼女を知ったのは『死んでから、または行方不明になってから』と考えただけさ。恋人云々はそのワケに関わってると見えるねェ」
・・・やはりこの人のひらめきは油断がなりません。迂闊な事を口走れば強請られる可能性もありえる事でしょう。私は知り合いの女の子のあんな写真とかこんな写真とか撮影してますし。
「いいだろう、私がこの町を訪ねた理由とも無関係とは言い切れなさそうだ。藤巳幽魅の『足取り』を調べてやろうじゃあないか」
「ありがとうございます」
私が頭を下げると、江楠さんはようやくその目に悪戯な色を宿した。
「前金代わりとして、ここの支払いは持ってもらうよ」
「あまり高額な注文は困りますが・・・」
料理はともかく、置かれているワインが気になります。お酒って意外と高いものもありますから。
「私がワインにこだわりの無い人間で良かったねェ？安心したまえ、ありふれた秋ワイン、ボトルで3000円程度のものだ」
ワインに目をやった事に気付かれたようです。まったく、油断も隙も無い狡猾な探偵さんだな。
「君とは今後もWin-Winの関係でありたいからねェ。我々は友人だ、そうだろう？」
この人の言うWin-Winとか友人ほど胡散臭いものもそうそう無いのですが、私は同意すると江楠さんと握手を交わしました。
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(masterpiece, best quality:1.3), illustration, (extream detailed), one girl, angel Descending
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