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ミリシラ様の異世界百景その19「ジャルダン自治区(梅)」
地球の皆の者、こんクエスト~!全知全能の大賢者「ミリシラ・シッタカブール」様じゃぞ! 今回ワシが来ているのは王国の中でもやや南寄りに位置する「ジャルダン自治区」じゃ。ここは一言で言うと、超巨大な庭園でのぅ。広大な地域をいくつもの区画に分け、区画ごとに魔法で気候を制御し、それらに合った植物を育てて保護するという事をしておる。じゃからとても一日では紹介しきれんし、今日の所はこの「梅」という花を見に来たって訳じゃよ。他にはスリジエ街道にあったような桜もあるが、どっちかというとスリジエ街道の方が立派な桜並木になっておるなぁ。 ちなみにここに来る事を事前にヒマリに話したところ、ヒマリも梅の事を知っておったわい。どうも地球人の中でも日本という国に住む者にはなじみ深い植物のようじゃな?この世界にもあるという事は、植物が地球と同じような進化を遂げたのか、それとも次元の裂け目を通って日本からこの植物の種子でもやってきたのか・・・今となっては分からん事じゃから、深掘りするつもりも無いがのぅ。 ここの楽しみ方としては、植物園のように植物を見て回ったりするのが一般的じゃ。研究目的なら、ここを管理する「ジャルディニエ」と呼ばれる専門職たちに話を通せば有償で植物を分けてくれる。観察も自由じゃが、外から虫や小動物などを持ち込むのはご法度じゃ。植物に影響を与える可能性が高く、生育環境に影響が出てしまうので、最悪出禁になって訴訟もされる。この自治区内におけるジャルディニエの発言力は非常に高いからのぅ。もういっそこの自治区そのものが王国とは違う国と言ってしまってもいいかも知れんくらいじゃ。 反面、ジャルディニエ主導のサービスは安心して楽しむ事が出来るぞ。区画ごとに飲食ができるカフェが設けられており、その区画で採取できる植物を用いたメニューが堪能できる。このカフェなら、さっきの梅の果実を食べられるわい。花から漂ううっすらとした甘い香りに違わず、砂糖漬けにされたこの梅はとっても甘くてうまいんじゃ。お値段は多少張るがのぅ、王国内では梅の果実が食用という事実が浸透しておらんから、ここ以外で買ったり食べたりするってのは難しいんじゃ。・・・地球人ずるいのぅ、こんなうまいもんぱくぱく食べよってからに。知っておるんじゃぞ、ヒマリが「梅干し」というものを教えてくれたんじゃ。確かこんな事を言っておったかなぁ。 「ミリシラ先生、今度はどこ行くんです?」 ジャルダン自治区じゃよ。知り合いのジャルディニエがな、梅の花が見頃だと教えてくれたでのぅ。 「あー、梅ですか。・・・ふむ、日本でも1月の終わりくらいに咲いてるのもあるし、梅の育成区画が日本みたいな気候にされてるなら確かに見頃なのかな」 何じゃヒマリ、お主梅の事知っておるんか? 「ええ、私が地球人だった前世では日本って国に住んでましてね、梅はよく見られましたよ。食べ物としてもよく知られてます」 あ、食用という事ならワシも知っておるぞ。自治区に行けば、ちょっと値段は高いが梅の実を食べられるんじゃ。砂糖に漬け込んであって甘いんじゃぞ~。 「・・・ふっふっふ、甘いのはミリシラ先生ですよ。梅の実の一番おいしい加工は『梅干し』って言うんです」 な、何じゃと。梅干し?梅の実を干すんか? 「ええ、熟して黄色くなった『完熟梅』を使って作るとおいしいですよ。食べ慣れた人なら、見ただけでよだれが口の中で分泌されるくらいです」 ・・・ほ、ほほう。し、しかしさすがにヒマリも作り方までは知らんのじゃろ?ん? 「いやいや、作ろうと思えばいけますよ。道具も材料も梅の実以外なら王都で普通に揃いますし。作ってあげましょうか?」 いいんか?いやぁ悪いのぅ。じゃあお土産に完熟梅っちゅうのを買ってくるわい。5kgくらいあればいいか? 「そうですね、そのくらいあればたくさん食べられますよ。梅干しは悪くなりにくくて長期保存にも向いてますし」 そうかそうか、よぉし任せておけ!買ってきてすぐできるんか? 「あ、それはちょっと時期的にきついですね。だいたい夏の始まりくらいからやらないと天候や気温の問題で上手くいかないんで。しかも完成まで1か月以上かかります」 むむむ、そうか・・・まあそればっかりは仕方ないのぅ。うまいものを作るにはその手間が必要なんじゃろうし。しかし楽しみじゃなあ、見ただけでよだれが出るほどうまいんか。あの自治区で出しとる梅の砂糖漬けよりもっともっと甘いんじゃろうなぁ・・・。 「・・・ふふふ、楽しみにしててくださいねミリシラ先生(にやり)」 いやー、持つべきものは先生思いの教え子じゃなぁ。梅干し、楽しみじゃのぅ・・・。忘れずに完熟梅を5kg、買って帰らねば。早速ジャルディニエに交渉せんとな。そういう訳で今日はここまでじゃ。 見てくれてありがとうなのじゃ、おつカブール~! 梅干し、梅干し、甘くておいしい♪夏になったら食べごろじゃい♪